羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 12

こんにちは。羽根直樹です。
名人戦リーグが終わり、井山名人への挑戦者が芝野虎丸九段に決まりました。
私はリーグから陥落してしまいましたが、また出直したいと思います。
今回の解説は、5月例会での一局です。

<1>

ここまでの流れは、高段者を目指す人にお手本として欲しい布石でした。
しかし、このタイミングでの実戦黒aは少し疑問です。
上辺での競り合いが始まったところですので、上辺に向かいたいですね。
白をすぐに攻める手は見当たらないので、黒1と補強をしながら地を増やすのが好点です。

<2>

白1から5と、白△を捨てたのが良い考え方です。
右上の黒は強い石ですので、白△を助けても黒を攻めることが出来ません。
そのような時は、石を捨ててしまいましょう。
白7と黒を狙いながら上辺の白を補強をしてから、白9と地を確保しました。
白の打ち回しが見事でした。

<3>

実戦は黒aと打ちましたが、やはり黒1とノビたかったですね。
黒はダメヅマリになりそうな形ですので、「二目の頭」と同じ価値があります。
aはヨセとしては最大ですが、まだ上辺白への攻めを狙いたい局面でした。

<4>

白△の好点をハネていますので、中央の競り合いは白が有利に進みそうな展開です。
実戦は4のアテを決めてから中央へ進出しましたが、単に白1が手筋です。
黒2には白3から5とサカレ形を目指します。白3では、aと取りに行くような手もあるかもしれません。

<5>

実戦の黒aは良い手ですね。
うっかり黒1と受けてしまうと、白2で取られてしまいます。
不安定な黒4子を補強しながら上辺の白を狙う黒aが、大切な一手でした。

<6>

白1から3はとても良い手です。
「白の補強」「白地を増やす」「黒地を減らす」「黒の弱点aを狙う」というすべてに当てはまりそうな手です。一石四鳥とも言えるような好点でした。

<7>

実戦白120のカケツギは、とても良い守り方でした。
白1と大きく囲った方が得に思えてしまいますが、黒2のハサミツケが心配です。
黒4と連絡されてしまうと、かえって白地が減ってしまいます。
白3で4のサガリがあるかどうかはとても難解で、プロでも読み切るのを諦めそうな難しさです。

<8>

この後も打ち進めましたが、白の勝ちとなりました。
盤面で白が10目ほどリードしており、上辺からの競り合いでポイントをあげた白が、そのまま勝ちきった印象です。
白の打ち回しは攻守のバランスが取れており、見事でした。
黒も良い形で打てていましたが、石の強弱よりも地を気にしてしまう傾向がみられます。
手抜きは好手の場合も多いのですが、競り合いの途中での手抜きには注意が必要です。
棋風ですので急に変える必要はありませんが、石の強弱を確認してから地のことを意識しましょう。

 

以上

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