羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 20

こんにちは。羽根直樹です。

少し前は持ち時間を残す打ち方をしていたのですが、最近は以前の「考え過ぎ(迷い過ぎ)」の傾向にあります。
時間配分をうまくするには、迷った時の決断力が大切ですので、「読んでも判断できないなら打ちたい手」という発想で打ち進めたいと思っています。
理想としては、最初から「打ちたい手だから打つ」となるのが一番良いのかもしれません。

今回の解説は、例会での指導碁(3子局)です。

<1>

実戦黒aは、良い方向のツケでした。
黒1とツケるのは、白2から8という進行が予想されます。
この後を正しく打てれば互角と言えますが、とても判断の難しい進行となります。
黒5で6のワリコミは、黒△が中途半端な位置になりますので良くありません。

<2>

白1は、黒2と打たれてしまいそうで廃案としました。
黒の手厚い碁形となってきましたので、これ以上は地にこだわらずバランスを取る必要があると感じたのです。
ヒラキを選択する場合、白aを狙うためにはbの場所まで近寄った方が良いのですが、打ち込みが残るのも心配で今回は白cという選択になりました。
部分的には白dも加えて4通りの打ち方がありますが、左上の厚みを考慮しての白cでした。

<3>

打ちたい手がたくさんある状況ですが、実戦の黒aは右辺の白を狙いながら上辺をひろげる構想ですね。
堅実な進行を好む方には、黒地を確保しながら右辺の打ち込み狙う黒1がおすすめです。
他には右下を補強しながら地を確保する黒bやcも有力です。
白dの狙いはそれほど厳しいわけではありませんが、心配な方は黒eの守りも立派な一手となります。

<4>

実戦の二線からハネたのは、とても良い対応でした。
黒1と上からハネて黒5までのような進行になるのは、この局面では失敗です。
その判断基準となるのが、黒△の存在でした。
黒△が近すぎて重複しており、白6に黒7・9などと受けてしまうと凝り形になってしまいます。
すでに打ってある石が良い場所に来るようにする手が、その局面での良い手となります。

<5>

白1に対しては、実戦の黒2から8までが良い対応です。
この時に白△の位置が重要となります。
黒8の後に白aと打つのも立派な一手ですので、白△がaにあれば白の形に無駄が無く、白満足な形です。
一路遠い白△の時は、互角の形と言えます。
白9に黒10まで、順調な流れでした。

<6>

黒1と分断をしてから、黒3・5と「もたれ攻め」をするリズムが良いですね。
ここで黒7のノゾキを決めてから黒9と攻めれば、完璧な攻め方でした。
ノゾキを決めておくことで、白の眼形をつくりにくくすることが出来ます。
ただし黒aからノゾくことが出来なくなりますので、黒7と9でセットということになります。

<7>

攻めながら考えることとして、「どのように得をするか」の他にも、「自分の不安定な場所はどこか」ということも大切です。
白△となったこの局面では、中央の黒に「ダメヅマリ」と「石の連絡」という不安を抱えています。
黒aと地を意識した攻め方ではなく、黒1とノビておくのが手厚い攻め方でした。

<8>

黒△ツケに対して白1と反撃したい場面でしたが、先行きが不透明で自重しました。
白1には黒2から8と形を整え、白9に黒△でコウになります。
黒にはa、白にはbの弱点があり、とても難解なコウ争いです。
黒としても心配な進行かと思いますので、中央をノビて補強しておいた方が良かったということになります。

<9>

黒1で、現在黒が10目ほどリードしています。
この後もしっかりと打たれ、黒の勝ちとなりました。
無理の無いゆったりとした攻めが、とても良いバランスです。
効率の良い形で打てており、安定感のある内容でした。
白は中央で仕掛けるよりチャンスがなかったということですね。

以上

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