羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 21

こんにちは。羽根直樹です。

ここ数年ネットでの対局が多かった方も、対面で対局する機会が増えつつあるのではと想像しています。

個人的な感覚では、ネット対局の良さとして、「決断力」や「いろいろと試してみる思い切りの良さ」が習慣となることかと思っていますが、「ふと思いついた手を打ってしまう」というマイナスにも注意が必要です。

対面での対局をした時に、「軽率な手拍子」や「簡単な見落とし」が増える可能性がありますので、相手の打った手をしっかり見てから着手するようにして下さい。

今回の解説は、例会での指導碁(4子局)です。

<1>

実戦の黒Aは好点でした。
他には黒1もあり、どちらも良い手ですが白への狙いに関しては微妙にニュアンスが違います。
黒Bなどの打ち込みを狙うのは同じですが、黒Aの方がより打ち込みが厳しくなります。
ということで、黒Aは「守ってください」という意味になり、黒1は「手抜きしたくなるでしょうから打ち込ませてもらいます」という意味になります。
黒△との構えでいえば、黒1の方が安定感はありますが、黒Aは左上の守りと打ち込みを見合いにしている打ち方です。

<2>

黒1と封鎖してしまうのも有力でした。
白2に対しては、シチョウ有利を確認して黒3から7と反発することが出来ます。

白2では別の手を選択することになりますが、Aと黒△の違いも影響なさそうです。

<3>

黒△は攻めを意識した打ち方で、白を連絡させないという気持ちです。
白1が最初に浮かぶ打ち方ですが、黒2・4で左上と連絡するのが黒の予定ですね。
黒△は取られないので、白を分断することが出来ます。
真正面から戦うのは不利と感じましたので、実戦は黒の予定をはずして白Aと打ってみました。

<4>

黒1と中央へ向かって一間トビするのは素直な打ち方です。
白2を心配して実戦の工夫になったと思いますが、今度は黒3で問題ありません。

AとBが見合いで、どちらを切断されても厳しいので白が困っています。

白2では、白CとDのスベリなどで、白△を捨てて打つことになります。

<5>

白1の打ち込みは、今が打ちたいタイミングです。
相手の地への侵入は、完成する直前が一番効果的なタイミングとなります。
黒△があるので、下辺への侵入場所としては白1しか残っていません。
「どちらに入ろうか」と思うときには、急がず他の場所を打ち、「ここしかない」となった時を逃さず打ち込むのが良い考え方です。
もちろん生きるのかどうかという危険はありますが、そこは何度も打ち込んで体験してみましょう。

<6>

黒1が真っ先に浮かぶ対応かと思いますが、白2や4を利かして白6とスベリます。
黒△が両方とも4線ですので、脱出出来なければ下で生きる、ということが可能です。
黒1は下辺を取りにいく手ではなく、級位者は「自分が連絡をして安心したい」、有段者は「厚みをつくって黒7で戦う」というような意味で使ってもらえればと思います。

<7>

実戦の黒1から5は特殊な打ち方ではありますが、この局面ではなるほどと思う工夫ですね。
現在解説を入力しながらも、じわじわとこの手の魅力が伝わってくる感じです。
一般的には、「右辺の打ち込みを無くしてしまう」「後手になる」というマイナス面が大きいので、おすすめできる打ち方とは言えません。
ただしこの局面では、黒Aとボウシをして攻めるのと同じ効果が見込める手で、より全局的に働く印象です。

<8>

白1は素直な手ですが、黒2から6と攻められるのが心配です。
黒△と打ってありますので、白は左下に弱点を抱えています。
どこかで白7と戻らなくてはいけなくなり、黒8と封鎖されてしまいます。
こうなると右辺に待ち伏せしている黒へ向かっていくことになるので、白は避けたい進行です。
白は中央への進出をあきらめて、生きを目指すことにしました。

<9>

相手が守った直後は、一番手抜きをしやすい状況という場合が多いです。
白が左下を守ったタイミングで手抜きをして、黒1と打ち込んだのも好判断でした。
ここから上辺での競り合いが始まるわけですが、この時に黒△二つの存在が心強いですね。
下辺の黒地はほとんど無くなっているのですが、それを気にせずこの手をイメージして打ち進めてきたことに感心してしまうのです。

<10>

この後もコウ争いが続きましたが、しっかりと戦い抜いて黒の勝ちとなりました。
黒△の打ち込みにつなげる打ち方が雰囲気出ていましたね。
全局を見て打つ意識が伝わり、とても良い内容です。
柔軟に工夫を重ねていますので失敗することもあると思いますが、恐れずいろいろと試してみてください。
以上

→詳細解説版(約2倍の解説量)のダウンロードはこちら
アドバイス21棋譜詳細解説