羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 40

こんにちは、羽根直樹です。

泰正会との交流戦が、10月に有楽町囲碁センターで行われました。

43名の参加者と羽根家の棋士4人が集まり、楽しく充実した交流戦・懇親会となりました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

今回の解説は、翔の会対泰正会側の長男(和哉・立命館大学)の対局(互先)です。

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白1に対して、黒2から4が厳しい追及でした。
白にとっては、取られたくない石が二つ出来てしまった印象です。
白1は「重たい」と表現される手で、黒石の多い場所では「捨て石」も視野に入れて、軽やかに打ち進める必要がありました。

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白1には黒2・4が厳しい反撃です。
ここでの白の対応は難しく、白が左辺を助けに行くと、かなり損な手を打たされそうな形です。
全局的な判断が必要な場面ですが、白5・7と捨ててしまうくらいの相場かと思います。
黒10までを先手で決めてから白11などで、「互角もしくは少し白有利」という進行です。
対局後の検討でも、本人たちが黒4までの図を並べており、感心しながら見ていました。

<3>

黒1からの白4の流れは見事な駆け引きでした。
黒1でaを狙い、白に受けてもらったら黒4で白△を分断する予定です。
白は2のツケと黒3を交換することで、白4と守ることを可能にしました。
続けて黒aと仕掛けるのは、白b・黒c・白dで黒が無理となります。

<4>

白△と上辺を受けた場面で、黒1と手抜きをしました。
とても良いタイミングです。
黒としては左上の攻めを継続するか選べる立場でもあり、「左下を打ちながら状況が整えば攻めを再開」というのが良い考え方となります。
左辺の黒が強い形ですので、左下の黒1も「白を分断して攻める」というくらいの気持ちで打っていると思います。

<5>

白1(黒2の左)とは、面白い手をひねりだしましたね。
黒2でシチョウですが、白3などに抵抗できなくなるだろうという意味です。
実戦は手堅くゲタに取りましたが、白aアテの打ち忘れを強調するためにも黒2は有力でした。
黒4と、白5を強制することで左上の黒を安定させて、黒10から12などと攻める流れを目指す打ち方です。
ただ白3ではもっと複雑なシチョウアタリがあるかもしれませんので、黒2は迷う場面です。

<6>

黒1はとても筋の良い一手です。
白△と左上の黒を封鎖して生きを催促した局面ですが、白を分断して反撃しようとしています。
脱出を優先するなら黒aという筋もあり、1とbが見合いで白は抵抗しにくい形です。
ただ黒aには白bと妥協されてしまうので、黒1の方が厳しい考え方です。
黒1には白としても簡単に妥協するわけにはいきませんので、緊迫した状況になりました。

<7>

簡単に読めるものではありませんが、黒1が有力でした。
白2の時が複雑ですが、黒3が成立しています。
順番に外側からダメを詰めると黒11までとなり、白12で黒△を取られてしまいます。
ここで読みをあきらめてしまいそうな形ですが、黒13で攻め合いは黒の勝ちです。
「大中小中」(おおなかこなかと読み、中手の大きな方が攻め合い有利になる形)と呼ばれる特殊な形ですが、ご確認ください。

<8>

白1が急所で、白の中押し勝ちとなりました。
2と3が見合いの状況で、黒3と打つのは白2で中央の手数が伸び、白の一手勝ちとなります。
黒2から黒△を捨てたあと、黒a・白bから黒eまで「大中小中」を目指す図が有力ですが、持ち時間も切迫していました。
「黒eのあとはコウ争いになり、黒優勢なまま長期戦」などと進めばタイトル戦のようですね。
序盤は厳しい攻めで黒が優勢となりましたが、双方が持てる力を出せていた中盤戦でした。
大会などではもっとうまく時間配分をすると思いますが、ちょっと本局は気合が入り過ぎたようです。
次の機会があれば、終盤の駆け引きも見てみたいですね。
以上

 

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