羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 14

こんにちは。羽根直樹です。

タイトル戦の多い季節となりました。

中部所属の私は天元戦(関天元対伊田九段)に注目していますが、名人戦(井山名人対芝野九段)や王座戦(井山王座対余八段)など、好きな対戦カードをお楽しみ下さい。

今回の解説も、例会での一局を取り上げてみます。

<1>

黒にとって、1と3は両方打ってみたい場所でした。
黒3はaやbも有力で、黒△を活用しながら白への反撃を狙っています。
左辺を補強した黒1に対し、白2とお付き合いしたのが問題でした。
白2では、aと黒△を攻めたかったですね。
白2と打てばcの狙いは残りますが、守った石を狙うよりも守らなかった石を攻める方が簡単です。

<2>

黒△を活用するために攻め取りをめざす黒と、阻止したい白との見事な攻防です。
黒1で単に3と打っていれば黒はダメヅマリになりにくく、黒7で8と押さえることも可能だったかもしれません。
黒9まで白が先手の進行となりましたが、ここでどこへ向かうべきでしょうか?

<3>

右上が急場ですので、白1から7のように打って、白△の4子を捨てる発想が浮かべばプロ級です。
白△が取られたことで黒地が15目増えても、白地が7目あるとすれば差引黒地8目となり、逃げて負担が増えるよりも得したと言えます。
白1では、aから捨てにいく作戦もあります。
白△は黒の厚みにくっついている石ですので、「助けても黒への攻めにならない」「小さくなら取られても構わない」という判断が出来ると良いですね。

<4>

白1は手筋ですね。
黒2には白3を準備してあります。
aとbが見合いとなり、黒が困っています。
黒△と打たれて危険な状況かと思いましたが、ギリギリのシノギを見つけ出せました。

<5>

白1と黒8は、弱点である相手のケイマをしっかりと狙えています。
黒6ではaと抜き、bのキリを狙うのも有力でした。
白9はcも手筋です。
白11に対して黒の次の一手は重要ですが、どのような選択となるのでしょうか。

<6>

黒1が冷静な一手です。
白2と連絡されてしまいますが、黒3から9までのような流れで眼を確保することになります。
実戦は3の場所にツケましたが、上手くいきませんでしたね。
攻めよりも自分の安全を考える局面でした。

<7>

実戦の黒aツケは雰囲気の出た手ですね。
黒1から5などが自然な形ですが、右側には白の壁が待っているので逃げるだけとなりそうです。
白6と打たれてみると、左辺の黒も心配になってきます。
このような流れを不満と感じて、隅に潜り込もうとしたのは良い考え方でした。

<8>

最後は白の3目半勝ちとなりました。
お互いに安定感がありましたので、黒にとっては一つのミスが重くのしかかった一局です。
右辺黒△という強引な手が浮かんでしまったことが問題でした。
白は右上だけが心配な打ち方でしたので、
周囲の相手の石が強い時は「石を捨てる」ということも選択肢に入れて構想を練りましょう。
以上

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